宮沢賢治“銀河鉄道の夜”の台詞についての質問です。
物語の最後。
カムパネルラが川に落ちてしまい、住民が総出で捜索している最中。
カムパネルラのお父さんがこう言う場面があります。
“けれども俄かにカムパネルラのお父さんがきっぱり云いました。
「もう駄目です。落ちてから四十五分たちましたから。」”
小さい頃から不思議に思っていました、どうして「45分たつと、もう駄目」なんだろう…、と。
作中にもあるように、もしかしたら下流に流されてどこかの岸にいるかもしれないのに。どうしてカムパネルラのお父さんはこうもきっぱりと45分で捜索を打ち切ったのでしょうか?
この45分という数字には何か意味があるのでしょうか?
宮沢賢治は宗教にも明るい人物だったようですし、この“銀河鉄道の夜”の中でもキリスト教などの描写があちこちにあります。
もしかしたらキリスト教に関する理由なのかな…?とも思いましたが、どうも確信が持てません。
これに関して、みなさんはどう思われますか?
賢治は、「銀河鉄道の夜」を1924年に初稿を執筆しているのですよ。
「銀河鉄道の夜」の執筆のきっかけになったのが、1922年11月の、
最愛の妹としさんの死なんですよ。
としさんとは年も近かったため、とても可愛がっていました。
としさん24歳、賢治26歳の時でした。
としさんの死は賢治にとって、とても衝撃な事でした。
>キリスト教などの描写があちこちにあります。
・賢治は宗教的なことをいろいろな文章で書いていますが、
仏教的なことも書いているのですよ。妹さんの死の半年後に書いた詩、
『白い鳥』には妹としさんのことを思い出して書いていますが、
その中の文章に、
(その菩薩ふうのあたまの容(かたち)はガンダーラから来た) という文があります。
キリスト教だけではなく仏教に関しても、知識が深かったのですね。
題目を称えているような文も、他に見受けられますよ。
余談ですが、賢治の墓は花巻市の日蓮宗のお寺にあります。
ですので、45分というのは、宗教に関する理由では無いと思いますよ。
・ジョバンニとお母さんの会話の中に、
「そうだ。今晩は銀河のお祭だねえ。」
「うん。ぼく牛乳をとりながら見てくるよ。」
「ああ行っておいで。川へははいらないでね。」
「ああぼく岸から見るだけなんだ。一時間で行ってくるよ。」
「もっと遊んでおいで。カムパネルラさんと一諸なら心配はないから。」
「ああきっと一諸だよ。お母さん、窓をしめて置こうか。」
「ああ、どうか。もう涼しいからね」
ジョバンニは立って窓をしめお皿やパンの袋を片附けると勢よく靴をはいて
「では一時間半で帰ってくるよ。」と云いながら暗い戸口を出ました
・ジョバンニは「一時間半で帰ってくるよ。」と、言っていますね。
そして、牛乳屋さんの帰りに、天気輪の柱の丘で、うたた寝をしてしまい、
カンパネルラと共に銀河鉄道の旅をするのですが、
私は、カンパネルラのお父さんが、
「もう駄目です。落ちてから四十五分たちましたから。」
これはジョバンニが天気輪の柱の丘で、うたた寝をしていた時間、
カンパネルラと一緒に銀河の世界へ旅していた時間が、
45分だと、思うのですね。
私は賢治がそのような事を思慮に入れながら、執筆したのでは?・・・。と
思うのですが・・・。
※写真はプラネタリウム『銀河鉄道の夜』を観て来た時のものです。
機会があったら、是非ご覧になってみてください。感動します。
45だから「死後」ってことで、
カムパネルラが死後の旅に出かけてしまった(つまり死んだ)とか・・・
こういうトンチだったりして。
私は、あの台詞からは、カンパネルラの生死自体に対しては何の確かな意味も読み取る事はない、と考えています。
その台詞から受け止めるべきは、彼の生存可能性や、その条件となる気温や水温、地形や流速など、事故の詳細についてではなく、むしろ、息子の事故とその生死にたいする父親の態度、心のあり方の方ではないかと思います。
取り乱さずに、冷静にこのように周囲に告げる父親は、当時も今も世間にはあまりいないでしょう。あのような立派な行為をなしたカンパネルラは、この父に育てられたという事に、読者は思いをいたす。それが読みの基本だと思います。
45という数字にこだわるのは、面白い着眼点ですが、こだわるとかえって作品の本旨から外れるのではないでしょうか?あくまで参考程度に調べてみられたらいかがでしょう。
単純に、溺死したと判断したのでは?『銀河鉄道の夜』の時間設定は天の川などの用語などから夏だと推定します。それでも、45分浮かび上がってこないのは、溺死と判断せざるをえないと思います(カムパネルラのお父さんは知識人のようですので、医学の知識もあるでしょうから)。
ただ、カムパネルラの「ザネリを助けて死ぬ行為」は、キリスト教の「人を助けて死ぬ」=「殉教」という構図があると思っています。
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